習氏が第3期を担うか問題と日本

  

 9月25日に、習近平総書記が自宅軟禁された、という情報を採り上げたネット動が及川幸久氏によって配信されたのに続いて、10個ばかりの同様のネット動画が作られ配信されたが、その後は陰を潜めているようです。地上波のニュース番組では、そのことは伝えられていません。

 これだけ多くの人が採り上げたということは、それほど世界の人々の関心の的になっているということでしょう。肝心のこの情報が真実なのかどうかは、現時点では分かりませんが、私の考えでは、10月の党大会も近いうえに、政権が倒れるのは当の人物が本来の場所を離れる(主として海外へ出る)ときであることを考えると、上海協力機構の会議のために、サマルカンドを訪問したことは、上記鉄則に反した行動であり、その可能性は十分にある、と睨んでいます。

 そうした中、10月5日、朝日新聞朝刊は習氏3期目続投が決定したと報じましたが、他の系統の新聞報道、地上波報道、ネット報道、外国系報道では、その報道はなされていません。

 朝日新聞や朝日系のネット報道によれば、その根拠として、9月9日の党政治局会議で10月16日開催の党大会以降の人事案骨格が示され、了承されたとしています。その出所は内情に詳しい党関係者としています。掲載している写真は、新聞では7月26日のものですし、ネット報道では9月16日のサマルカンド上海協力機構出席のときのものです。いずれも軟禁された日以降の写真ではありません。

 ネット動画が言うように、習氏は自宅軟禁された(したがって習氏の3期目担当はありえない)のか、それとも朝日記事にあるように、習氏が3期目の担当者に決定したのか、は10月中旬に予定されている党大会までに、習氏がテレビの前に現れて、自分が第3期を担うと宣言するのか、によって明らかとなります。

 ここで、習氏が第3期を担うことになるのが、日本にとって良いことなのか、悪いことなのか、望ましいことなのか、できれば避けてもらいたいのか、考えてみることにしましょう。

 それに大いに参考になると思われるのが、高橋洋一、石平『経済原理を無視する中国の大誤算』(ビジネス社、2022年)です。この本が類書と違う点は、経済的観点から、習氏の経済政策は行き詰まる、経済崩壊することを立証しようとしているところです。本書では、第6章に「国家破綻と台湾侵攻のどっちが先か」を置いていて、このテーゼは本書の副題にもなっています。

 そこから推測できるのは次のことです。習氏が第3期目も政権を握ることになれば、経済原理を無視しているがために、経済崩壊はますます進むとともに、国民の眼を外に向けさせるために、台湾侵攻の可能性は増すだろう、ということであり、

 反対に、第3期に相当する時期に他の者が政権につけば、ある程度経済原理に即した政策をするであろうことから、経済崩壊の進展はいくぶん抑えられるだろうし、経済崩壊の深度を認識するがゆえに、台湾侵攻の可能性はだいぶ少なくなるだろう、ということです。

 しかし、新代表者が誰になろうとも、中共という体制そのものは続いたとしても、せいぜい2・3年でありましょう。それだけ経済崩壊の深度が深いからであります。そういう状態では、たとえ経済に強い人物が代表になったとしても、その立て直しは無理だと思われるからであります。

 『経済原理を無視する中国の大誤算』の観点から言えば、次のようになるでしょう。すなわち、鄧小平氏の改革以降、中国は経済的に資本主義を採ってきたにもかかわらず、①近代経済学を導入せず、②統計に基づく政策を行わず、③各企業においてはバランスシートに基づく経営を行わず、④「(企業が)破産したら経営者を死刑にすればいい」とか、⑤「物価に“インフレになるな”と厳命する」とか、⑥「企業や国民へのスパイ強要」で国民や外国企業から総スカンを喰うとか、⑦西側の国家や企業が採るようなことをまったくしていない、どんぶり勘定的なことしかしていない、まったくお粗末な国家経済経営であったので、経済崩壊は当然でもあり、その再建策すらも立てようがないのです。

 上記の問題を日本にとって、どちらが好ましいか、の観点から考えますと、以前は習氏が就いた方がより経済崩壊が一層進むので、好ましいと考えていたのですが、ここにきて、誰がなっても経済再建は難しいと思われるので、それであれば、より台湾侵攻(従って日本侵攻)が少ないであろうと思われる、習氏以外の人物ということになります。 (2022年10月)

カテゴリー: 政治・経済論

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