莫大な借金と財政の健全化問題

    

 (1)2年ほど前に矢野論文が出て以来、財務省が説くように、できるだけ歳入と歳出とは同じでなければならない、歳出が多い場合でも、借金はできるだけ少ない方がよい、今までは毎年毎年借金が増え続けて、累積借金は普通には返せないくらいに膨らんでいる、国家の財政破綻はもうすぐ来るかもしれない、だからこれからはそういう借金に頼る財政は避けるべきである、との理論(森永卓郎しの言う「ザイム真理教」)が襲って来ました。

 このとき以来、いや少なくとも私についてはそれよりも以前から、それとは反対の理論に組みしてきたのであります。このとき私が矢野論文反対を言ったためか、メール討論会では、それへの反論、つまり矢野論文賛成論はあまり強く出されませんでした。借金が多いことには不安も出ていて、最終的には徳政令によって解決できる、との慰め理論も出されました。

 経済学の歴史から行くと、矢野論文はケインズ政策以前の理論であって、それに対してケインズ政策の導入によって、大きな政府の要望もあって、歳入以上の歳出により、経済を活性化し、結果として経済不況を好況へと転換させることができたのでした。その当然の結果として、政府は国債を発行し、借金が膨らんでいき、財政赤字が常態化していったのです。

 (2)矢野論文というのは、財政の健全化、赤字財政の圧縮を訴えるものであり、それはケインズ政策を長年続けても、少しも経済が立ち直らないといった現実を踏まえてのものでした。経済学的にもケインズ経済学の無効化が言われ、ケインズ離れと軌を一にしていました。

 かと言って、矢野論文に組みすると、黒字財政になるように、歳入減少に合わせて、歳出は大幅に削減せざるをえず、景気を刺激する対策が打てず、景気はますます後退しますし、社会福祉関連費は大幅に削減することになり、国民生活が今よりも各段と悪化し、約50年ほど前のレヴェルまで後退することも予想されます。それで国民が満足しますか、ということです。

 この矢野論文が出たときに、これに反対する者として、高橋洋一氏を筆頭に、三橋貴明氏、森永卓郎、渡辺哲也氏、藤井聡氏、西田昌司氏などが大反対していました。この立場を強化すべく、今また森永卓郎氏が『ザイム真理教』(三五館シンシャ、2023年)を出版したのでした。

 (3)そうであったとしても、この理論(矢野論文への反対論)が正しいとして、根拠にするのは2段前に書いたようなことでしたので、一抹の不安があるのも事実でした。しかし、今回その不安を解消して、これは確実に正しいと思わせてくれたのは、高橋洋一氏によるユーチューブでの解説でした。これは彼の単独のユーチューブ発信ではないので、どのチャンネルだと言うのは、ちと説明が要ります(このことをまとめるという予定がなかったので、そのサイト名をメモするのを失念しました)ので、ここではそれをカット。

 ここでは、その理論を説明します。つまりは国家の財政が、本当に赤字で国家が崩壊するのかは、政府財政を企業のバランスシートのように、書き記せばよいことになります。政府の資産と負債のバランスシートを作るのです。この場合、単に省庁のものだけを数え上げても意味がないので、下請け官庁、外局の組織など政府の資金が流れているものすべてを勘定に入れるのです。企業で言えば、連結決算です。

 それでいけば、何千兆円の政府借金に見合う政府の資産があり、その負債と資産の差が、その幅は大きくないものの、利益となっているのです。この差のところで、大幅な赤字となっていれば、それこそ国家破綻です。こういうことでその国家(政府)の財政の健全度が分かるそうです。

 ちなみに、このことを世界で最初に提案したのが高橋氏であり、それを見て先進各国がそれを教えてくれというので、世紀末には各国へ説明出張に行った、とのことです。この理論が先進諸国で認められているらしく、この頃は日本の借入金が多すぎて、財政不健全である、と先進諸国は批難しなくなったようです。

 (4)ただ、現在の予算制度で良いか、となると、問題性あり、と考えます。既得権益死守を第一に考える官僚の悪いところで、前年度予算にプラスアルファーして予算設定することは、諸悪の根源の一つです。予算が余れば、期末には官僚の空出張とか空工事が増えるとのこと。それで官僚自身が得をするので、この制度の改善を進言はしません。

 予算が余れば、そしてそれを申告すれば、官僚審査のグッドに加えるとかの制度を新設すべきです。あるいは年度のごとにゼロベースから予算を設定する、といったことや、単年度ではなく複数年度での予算とする、などの工夫が必要です。

 こうした制度を導入すれば、軍事費と子育て費の増加に、増税をしなくとも、十分対応できるのではないか、と私は思っています。借金を増やしても問題はないが、それよりも現行の予算制度を抜本的に洗い直して、不要な出費を抑えて、適正な予算制度を確立することの方が重要だ、と考えます。

カテゴリー: 政治・経済論

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