経済、政治のショック療法とは


 今月の「100分de名著」(Eテレ)はナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』となっています。我々のメール討論会での友人が今まで何度も採り上げ言及してきた火事場泥棒的経済政策、新自由主義の暴力的側面がクローズアップされています。しかもその講師が、これまたその友人が何度も採り上げてきた堤未果女史です。

 今回の番組によって、テレビでは初登場ではないでしょうか、堤未果女史の登場です。ユーチューブでは一度見た切りですが、テレビへの登場は珍しいです。さらには『ショック・ドクトリン』そのものが問題の書ですから、メディア権力側もこの書と堤女子のテレビへの登場をよく許したな、という感じです。

 堤女子はこの6月に「100分で名著」に、『ショック・ドクトリン』の解説で登場することを事前に知っていて、それに合わせてそれを解説した自身の本を出そうと計画したらしく、昨日ジュンク堂に行って、堤女子著の新作『堤未果のショック・ドクトリン』(幻冬舎、2023年)が置かれていることを発見しました。しかも、ジュンク堂での、今週の新書部門売上高ランキングで第6位にランクインしていました。

 原作のナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』の内容については、NHKテキストや堤未果『堤未果のショック・ドクトリン』によって分かりますが、ここでは簡単に説明しておきます。

 第二次大戦後、欧米先進国を中心に、ケインズ理論や大きな政府論や社会福祉論が幅を効かせていましたが、それを快しと思わない、新自由主義論、小さな政府論、社会福祉抑制論が前者を押さえ込み、自らの理論、立場を強化するために考え出したのがショック・ドクトリンでした。

 ケインズ理論や大きな政府論や社会福祉論は国民各層に受け入れられていましたので、通常のやり方ではそれを覆すことは不可能です。そこで新自由主義者は社会全体にショックを与える方法を思い突きます。精神医学におけるショック療法を利用したのです。

 彼等、新自由主義者は、戦争、革命、災害などショックを起こすような大事件を利用し、国民を混乱させて、頭が真っ白な状態のときに、計画的、意図的に資本を投入し、自らが儲けるとともに、公共部門の民営化、社会福祉支出の制限など、新自由主義的政策を矢継ぎ早に打ち出して、社会を丸ごと大変革させたのでした。

 ことの真相は、ショック・ドクトリンとは新自由主義の暴力的実行であり、それへの批判はリベラルとしては当然です。事実として、ショック・ドクトリンを含めた新自由主義批判のことを記した、私の『「新自由主義」をぶっ壊す』(春風社、2010年)を著したときは、私はリベラルとして批判していました。

 その後私は保守へと転換しましたが、ショック・ドクトリンを含めた新自由主義批判の姿勢は変えていません(ちなみに『「新自由主義」をぶっ壊す』は現在もネットで購入できますし、ネットでの書評も上々です)。

 それでも俺たちには関係ない、と言いたそうなリベラルの人に言いますが、ショック・ドクトリンは日本とも関係あります。誰もなかなか真相を見抜いていませんが、かつても小泉首相による劇場型政治というショック療法によって、日本が死守すべき郵政関連資産をことも簡単に外資に明け渡ししてしまった国賊的行為があったのです。小泉のことをいまだにリーダーシップのある首相であった、とかの印象しか持たない人がほとんどでしょうが、実は国賊です。

 ショック療法を利用した者としては、その他にチリのピノチェト(アジェンデ政権誕生)、イギリスのサッチャー(フォークランド紛争発生)、アメリカの小ブッシュ(同時多発テロ発生)なとがいます。()内はショック療法のショック事件を表示しています。

 読者諸賢も今月の「100分de名著」を機に、新自由主義のショック療法を検討し、それを敵視、警戒する態度を守ように願います。

カテゴリー: 政治・経済論

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